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18.4  針刺し事故、傷口への血液付着などへの対応(B型肝炎)

医療スタッフに針刺し事故、傷口への血液付着などが生じた場合には、すみやかに以下の処置をおこなう。

1.一般的な応急処置

a. 針、メス刃などによる、刺し傷や切り傷の場合には、汚染血液の血中への侵入量を最小限にとどめるため、流水下で受傷部を絞り出すように充分洗浄する。その後、細菌感染防止のため、消毒用エタノール等で消毒する。

b. 眼などに血液が飛んだときには、多量の水による洗浄とともに、ポリビニルアルコールヨウ素剤(イソジン点眼10%希釈)による消毒をおこなう。

c. 口腔粘膜などには、イソジンガーグルを使用する。

d. 無傷の場合でも、手指等が血液、体液などに触れた場合は、流水で十分に洗い、消毒用エタノールで消毒する。

 

 

2. 針刺し事故後の対応

1) 事故針を使用していた患者がB型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)陽性であった場合、あるいは事故針を使用していた患者が不明であった場合の針刺し事故

a. 針刺し事故を起こした本人がHBs抗体陽性か、あるいは陰性か調べる。本人がHBs抗原陰性、かつHBs抗体陰性であった場合には、HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)(薬)をできるだけ早く、遅くとも48時間以内に筋注する。針刺し事故を起こした本人がHBs抗体陽性であるのか、あるいは陰性であるのか不明であった場合には、とりあえず、HBsヒト免疫グロブリンを筋注しておく。
一方、針刺し事故を起こした本人がHBs抗体陽性の場合には、経過観察とする。ただし、抗体価が低い場合(10 mIU/mL以下)には、HBsヒト免疫グロブリンを投与する。
なお、針刺し事故を起こした本人がHBs抗原陽性の場合には、これを機にB型肝炎ウイルス(HBV)のキャリアとして精査する。

b. 事故針を使用していた患者がHBs抗原陽性であった場合には、当該患者についてさらにHBe抗原とHBe抗体を調べる。患者がHBe抗原陽性であった場合には、針刺し事故を起こしたスタッフに対しB型肝炎ワクチン(薬)も投与する。B型肝炎ワクチンは、事故針を使用していた患者がHBe抗原陽性であることがわっかた時点で最初の投与をおこなえばよい。その後は、1ヶ月目と4〜5ヶ月目にB型肝炎ワクチンを接種する(合計3回)。最後のB型肝炎ワクチン接種から1ヶ月後にHBs抗体が陽性となったかどうか、確認する。なお、B型肝炎ワクチンは、成人ではHBs抗原量に換算して1回量10μgを皮下注する。B型肝炎ワクチンは、有効成分を液相に浮遊させたものであるため、十分に振って沈澱している有効成分を浮遊させてから使用する。

なお、事故針を使用していた患者がHBe抗体陽性であった場合には、ほとんどの場合、HBsヒト免疫グロブリンの投与のみで予防が可能である。しかし、針刺し事故は同一人が繰り返し起こすことが多いため、この場合でもB型肝炎ワクチンの接種を併用するのが望ましい。抗体価が低い場合にも、同様にB型肝炎ワクチンの接種を併用する。

 

2) 事故針を使用していた患者がB型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)陰性であった場合の針刺し事故

  経過を観察するに止める。

 

 

HBsヒト免疫グロブリン

 抗HBsヒト免疫グロブリン
           (日赤)
 ヘパトセーラ Hepatothera
           (化血研、藤沢)

B型肝炎ウィルス(HBV)ワクチン
      
    ビームゲンBimmugen
         (化学及血清療法研究所)
   ヘプタバックス-II Heptavax-II
         (万有)
   r-HBワクチン
         (塩野義)
   ビケン-HB
         (田辺)
   沈降B型肝炎ワクチン
         (明治乳業)


3. HBsヒト免疫グロブリンの予防成績(厚生省B型肝炎研究班による)

針刺し事故の後48時間以内にHBsヒト免疫グロブリンを1回筋注した場合、汚染源となったHBV陽性の血液がHBe抗原陽性であった場合には、167人中133人(80%)では予防に成功し、34人(20%)でHBVの感染が起こっている。これに対して、汚染源となった血液がHBe抗原陰性(HBe抗体陽性)であった場合には、675人全例(100%)で感染の予防に成功している。
さらに、事故後48時間以内にHBsヒト免疫グロブリンを筋注するのに加えて、B型肝炎ワクチンも接種すると、汚染源となった血液がHBe抗原陽性であっても、ほとんどの場合、予防が可能である。